不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 侍女たちは、首の上の方まで襟が詰まった黒いお仕着せに白いエプロンをつけている。エプロンだけはフリルがあって、可愛い形だった。

 大きな姿見も運ばれてきて、まゆこは自分の姿を凝視する。

 軽い化粧をされ、髪の横の部分を後ろで細い三つ編みにされた。後ろ髪は背中に流す形で丁寧に梳かれる。

 あれこれ装飾品も運ばれてきて、イヤリング、ネックレス、髪飾り、そして指輪が装着された。

 宝石は、一目でそれと分かるダイヤモンドが主体だ。眩くて大層重い。

 可愛いらしいパンプスも持って来られたので、素直に足先を通した。

「出来上がりましてございます。ジリアン様にお目覚めをお知らせいたしますので、しばらくお待ちください」

「はい。ありがとうございました」

 思わずぺこりと頭を下げると、数人がくすくすと笑い、年長者らしき者が怖い目つき一つでそれをやめさせた。

 きっちりとした上下関係は、まゆこの職場を思い出させる。
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