不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「おまえは、ザカール族ね……!」

 棒を手にしてざっと構えるエルマをやっとまともに見たカーライルは、驚きと不審を浮かばせた顔で指摘した。

 まゆこは最近得た知識を手繰り寄せる。

 ――ザカール族? ルースに聞いたことがあったような……。そうだ、確か戦闘民族だとか。エルマが?

 魔法具は武器を隠し持つために変形させただけのもので、攻撃魔法はそこに貯められていない。だから一度使ったら終わりということはなく、ひたすら魔法を弾くだけに終始する。

 あとは鍛錬によって鍛えた自分の肉体を使う。

 まゆこの腕を掴んで後ろに引いたルースをちらりと見た。彼はまゆこの視線を感じるとにこりと笑って言う。
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