不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「彼女は棒術の名手なのです。ジリアン様の命令で、マユコ様を守るためにお傍に付きました」

 ルースの配下ということだろうか。侍女の仕事に慣れていなくて当たり前だ。

「あ、じゃあ、あのときも」

 最初にカーライルと接触したときのことが頭に過ぎる。自分は邪魔をしただけだったのかと思うとがっくりきそうだったが、ルースは否定する。

「広い場所では魔法力に太刀打ちできません。距離を取られたら終わりです。ですから、あのときのマユコ様のご判断は、正しかったのですよ」

 狭い通路の中では接近戦にならざるを得ず、カーライルは魔法発動の詠唱、あるいは動作の前に棒を入れられて集中できない状態になっている。

 指を弾くよりも棒の動きの方が速い。

 ルースはカーライルの動きを視界に捉えながら、まゆこが巻き添えにならないよう腕を掴んで誘導している。
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