不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 ジリアンに続いて、彼と同年代に見えるルースが入ってきた。

 にこやかにまゆこを見てくる様子は、仏頂面のジリアンとは対照的だ。服装はお仕着せではない。ただ、貴族的でも、ジリアンよりは地味に見える。

 ルースのうしろから侍従と思しき者が付いてくる。

 小柄なせいもあり、年齢はまゆこより下に見えた。十八歳くらいだろうか。もっと小さいかもしれない。侍従は、ワゴンを押していた。

 ワゴンの上にはお茶のセットと、クッキーが積まれた台付の菓子盆が載っている。

 ルースは侍従に指示を出して、丸い小テーブルの上にお茶を用意させてから、まゆこに『どうぞ』と笑い掛けてくる。

 あまりの親しみやすさに、思わずルースをしげしげと見る。ベランダでは遠目だったからルースの髪の色くらいしか分からなかった。

 近くで眺めるブラウンの髪は、額の真ん中で分けられてワンレングスになっている。横髪は後ろへ回るほどの長さがないためか、無造作にぱらぱらと頬に掛かっていた。

 ほとんどの髪は頭のうしろで一つに括られているが、長さのせいでちょこんと突き出たようになっていて、少し可笑しい。
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