不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 ジリアンはゲオルグへ顔を向ける。怒り心頭といった声で糾弾を始める。

「わざとだな」

「ははは……いや、怪我の具合をだな」

「《フルーガス》!」

 怒りに満ちたジリアンは、そこにあったソファを浮かせてゲオルグにぶつける。

「おい、よせ。結界はおまえには利かないといっても、これは王権の乱用だろうが」

「うるさい」

 王城では魔法を使えなくする結界が張ってあるが、それを維持しているのは王だった。戴冠式の前でも王位継承はすでに済んでいるので、ジリアンには普通に魔法が使える。

 騒ぎが始まる。その間にまゆこはベッドから抜け出した。

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