不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 一方、ジリアンは。

 まゆこに結婚を申し込むために、特大の宝石が嵌った指輪を用意していた。

 先祖代々の領地へ戻ってきたこの機会を生かしたい。

 彼女が、『わたしの世界の風習では、左手の薬指に嵌める指輪はね……』――と話してくれたのだ。

 今夜こそ。ここなら邪魔も入らない。

 王城へ戻れば、戴冠式の準備や、諸外国への招待状の打ち合わせ、大臣たちとの会議などの政務で、ジリアンはものすごく忙しくなる。

 おまけに、ゲオルグが何かにつけて邪魔しに来る。カーライルもだ。

 だから。

「今夜だ」

「はぁ」

 ルースが気のない返事をする。

「なんだその気の抜けた返事は」

「何と言いますか、今更感がすごいですよ」

「……とにかく、今夜だ」
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