不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
『わたしも、もっと積極的に突き進むというか……あ、でも補佐と喧嘩したいわけじゃないんだよ。あの人のことは研究者として尊敬しているんだ』

 ヒイラギに話しかけては、自らを振り返って反省する。このごろは、それが日課になっていた。

 今朝もそうやって家を出てきたというのに、また叱られてしまうとは。

『もういいわ。帰りなさい』

 ため息を吐いた室長補佐は、ラボの使い方から稟議書の上げ方など、彼女に様々なことを教えてくれた人だ。がっかりさせたのかと思うと、それもつらい。

 早くきちんとした研究員になりたくて頑張っているつもりだが、独りよがりだったのだろうか。

「わたしって、研究者に向いていないのかな……」

 悩みながら家路を辿る。ぶつぶつと呟くのが止められない。

 樹木医という選択もあったが、細胞レベルで木々を知りたくて研究職へ進んだ。
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