不本意ですが、異世界で救世主はじめました。

「マユコ！」

　ジリアンが手を伸ばすが、彼とまゆこの間にはテーブルがあって、身体が半分以上外へ出ていた彼女には届かなかった。

　彼はそのテーブルを横へなぎ倒したが、その時点でまゆこは窓の外に出てしまっていた。落下してゆく。

「きゃぁあ――っ」

　叫んだ。

　瞬きの間にすべてが起こる。

　地面に激突するかと思われたとき、上の方から声が聞こえた。

「《ガッソリーダ》――！」

　まゆこの下に彼女を受け止められるだけの空気のクッションができる。

　その上にぼんっと落ちたまゆこは、バウンドして落下の衝撃から逃れた。少し跳ねて、わずかに浮き上がる。

　次に落ちたときには空気の塊は消えていたので、とすんっ……と土の上に横たわった。ボリュームのあるスカートが助けになって痛みもない。

　地面に芝生が張られていたのも幸いした。芝が土を柔らかくしていたからだ。

　ようように上半身を起こす。はぁはぁと早い息遣いを繰り返した。