不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 手を引かれながら、まゆこは喉に小骨が刺さったような思いを抱える。

 ――バーンベルグ家の男子に掛けられた呪い。なんだろう。わたしには、手助けできないことなんだよね。……確かにそう。だって、わたしはいずれ帰るんだもの。

 興味本位で訊ける内容ではないと思われた。

 ――いったい〈召喚条件〉はなんだったのかしら。

 訊きたいことは多い。

 しかしすべてを知ったら、帰れなくなくなる気がした。
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