不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 まゆこは、皿の上のペコロスが上手く捕らえられなくて、フォークで何度も刺しながら顔を伏せた。

 彼女も男性と会話をするのは不得手だ。

 ジリアンが女性を苦手としているなら、上手くいかない同士で食卓を囲んでいることになる。

 それでも会話が弾んでゆくのが嬉しい。

 ジリアンも同じ気持ちのようだった。

「マユコと一緒にいるのは楽しいぞ。それにほっとする。おまえは私を恐れないし、私の心配までしてくれる。こういうのを、心が休まると言うのだろうな」

 まっすぐ顔を向けて言われると、それ以上なにも食べられなくなってしまった。

 頬も熱を持ってくる。赤くなってきたのを自覚したまゆこは、フォークとナイフで肉をひたすら細切れにした。
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