不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「我慢する。ジリアンが魔法闘技をするときに離れた場所にいるのは不安なのよ。あなたの傍にいたい。だめかしら」

「…………」

 彼は両手の動きを止めてまゆこをじっと見てきた。

 ――驚いている? なにか変なこと、言ったかしら。

 巨大な長テーブルの端に当主のジリアンが座り、角を挟んだ左側にまゆこが座っている。近い位置でまじまじと見つめられると、心が騒いで仕方がない。

 ジリアンは、長い沈黙のあとで口を開く。

「望むなら連れて行く。私も、おまえを置いていくのは気がかりだからな」

 ほっとして微笑んだ。

「ただし。闘技に出る連中は敵という認識になる。相手もそう思っているから、マユコに危険が降りかかる可能性もある。それでもいいのか?」

「一人で待つよりもましよ。ジリアンになにかあったら、わたしは帰れなくなってしまうもの」
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