不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 とん……っと床に足が着いた。パンプスは穿いている。身に付けていたものはそのままだ。

 急に重力が圧し掛かってきてよろりと傾ぐ。

 すると、誰かの腕がまゆこを支えた。

「ん? あの、ありが……」

 礼を言う途中で、相手の顔が視界に入る。なんと、髪の色がシルバーとゴールドの中間色だった。

「ペールゴールド……?」

 ゴールドが多少強めにでている華やかな髪色だ。思わず見惚れる。

 豊かな感じで頭部を覆い、額にある前髪がさらさらと流れている。軽そうだ。ぽかんと口を開けて眺めてしまった。

 ――瞳の色は藍色? 違う。もっと明るい……。

 海と空を混ぜ合わせたような濃い紺碧の瞳が、冴えた視線を彼女に向けている。

 身長は高く、まゆこを支えた腕は上着で隠されていても硬い感触があった。

 ――ここ、どこ? なにこれ。……この人、だれ?

 驚きすぎて声も出ない。

 若い男性だ。三十歳まではいっていないと思うが、男性の年齢など顔を見て分かるものではない。
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