誰からも愛されない

✛✛挙式


式当日····

彩心の控え室には、
皐さんと紫月さん、父親の涼がいた。

涼は、落ちつかなくてソワソワしていて
皐さん達に笑われていた。

そこに
秋山のお義父様、お義母様
長男の陽さん夫婦、ゆかりさん夫婦
凪さん、楓さん、
そして忍さんがみえた。

双方ご挨拶をして
改めて長男の陽さんには
忍さんがきちんと紹介してくれた。

凪さんもきちんと謝罪してくれたが
私が弱かったからです。
と、伝えたが
中々、頭を上げてくれなくて
父・涼が
「秋山君、そんなに気になるなら
今から先、彩心を守ってくれ。」
と、言うと
「はい。わかりました。」
と、言って握手をしながら
やっと笑ってくれた。
「お父さん、ありがとう。」
と、彩心が言うと
涼は、すごく照れていた。

そんな様子を秋山夫妻も皐達も
嬉しいそうに見ていた。

式は、厳かに進み・・・
披露宴は約500名
これでも絞ったとお義父様が・・・

彩心の白無垢、色打ち掛けも
とても美しく······
出席者は、うっとりしていた。

彩心のお願いで
涼は、彩心とバージンロードを
一緒に歩いた。
涼の頬には、ずっと涙が流れていた。

親らしい事を何一つせず
辛い悲しい思いを与えるだけの
父親なのに。

涼は、彩心が生まれた時に
戻りやり直したい
思いを噛み締めて
忍の待つ場所へ
彩心を連れて行く。

「私は、辛い思いしか
させていません。
どうぞ、この娘が····彩心が
幸せで安らげる家庭を
作ってあげて下さい。
宜しくお願い致します。」
と、言いながら
彩心の手を自分の腕から離して
一度、手を握り
「幸せになるんだよ。」
と、彩心に言うと
「お父さんも。」
と、彩心の言葉に一度、頷き
彩心の手を忍の腕に置いた。
忍は、
「お約束します。
お父さんも、遊びにいつでも
見えて下さい。」
と、伝えると
涼は、何度も頷きながら
「ありがとう。ありがとう。」
と、言った。

参列者も、みんな涙を流していた。

彩心のドレス姿は······
真っ白のウェディングドレス
真っ赤なカクテルドレス
ご挨拶用の黒のドレス
どの姿も綺麗で男性からも女性からも
ため息が漏れていた。

お客様がお帰りの際にお見送り·····
一人、一人に丁寧にご挨拶をした。

最後に清香さんが来てくれて
ちゃんと謝ってくれた。

私は、自分が弱いだけで清香さんは
悪くないと言うと
涙を流してくれた。

それからは、仲良しになっていった。

ご挨拶が終わり、引きあげようとしたとき
「あの、すみません。」
と、声をかけられて振り向くと
新が立っていた。

「あの?」と、忍さん。
「新?」と、彩心。
「彩心。新さんとは?」
「忍さん。
皐さんの息子さんの新さんです。」

「何しに来たの?」と、皐さん。
「俺だって、自分のせいで彩心を
傷つけて苦しませて責任感じてるんだよ。
彩心。本当にごめんな。
いや、すみませんでした。
俺が言うのも変だけど
旦那さんと幸せになって欲しい。」
と、言って忍にも頭を下げてくれた。

「新、ありがとう。
ずっと、お母さんの皐さんを
とってしまってごめんね。
今からは、孫の顔も見せてあげて。」
と、彩心が言うと
「えっ、勝手に。要らないわよ。」
と、皐さん。
「俺も、あってほしい。
嫁にも娘にも。」
と、言うと皐さんは苦笑いをして
「はいはい。」
と、言っていた。

忍は、
「新さん。
わざわざありがとうございます。
彩心は、必ず、僕が幸せにしますから。
ご安心下さい。」
と、言うと
「宜しくお願い致します。」
と、新は頭を下げた。


本当に、最後の最後まで
温かな良い日で、良い結婚式となった。

各々、温かな気持ちで帰宅していった。

彩心の人柄は瞬く間に広まり
綺麗で美しく
その上、儚げで謙虚で
彩心の人気は
うなぎ登りとなり
忍は、心配でたまらなかった。
< 105 / 107 >

この作品をシェア

pagetop