誰からも愛されない
✛✛卑屈
「‥‥わたしは・・・」
「いや。待って彩心ちゃん。
今ここで断られたりしたら
もう二度と会って貰えないと思うんだ。
だから、僕の事を虫酸が走る位きらいなら。
顔も見たくないと思うならしかたな・・」
「そっ、そんな風には思っていません。
顔も見たくないなら
一緒に食事などしません。
虫酸が走るなら
手など繋ぎません。
あっ、えっ、と・・あの・・」
「‥‥‥ほんと?良かった。
強引だったかな
と、心配していたんだ。
凪は3日も彩心ちゃんといると······
いたんだ····と思うとたまらなくて
自分勝手に動いてしまって
彩心ちゃんに呆れられてるのでは
と、思っていたんだ。」
「‥‥‥今更ですか?
でも正直、お迎えには
びっくりさせられましたが
忍さんのお顔を見たとき
ホッとしました。
凪さんとは・・・
そんなに一緒にいませんでしたよ。」
「彩心ちゃん、本当に嫌でないなら
もう少し僕を見てくれませんか?
仕事人間で面白味のない人間ですが
初めてなんだ、自分でも
びっくりしてるほど彩心ちゃんが
絡むと勝手に体が動いてしまって。」
「忍さん、隠しているわけでは
ありませんが・・
私は、離婚経験者です。
企業のトップにいらっしゃる
忍さんに会うとはおもいませんが。」
「離婚されていることは
知っています。
父に聞いていました。
ただ、あなたの情報はそれだけですが。
僕は、彩心ちゃんにどんな過去があろうが
何も気にしていません。
あっ、嘘。
元旦那さんに嫉妬はしていますよ。
彼より先にあなたに会いたかったと
でも、僕は〈才賀 彩心〉に惹かれています。
それは、誰にも止められないし
誰も止める権利はない。
だから、彩心ちゃんは
僕の事だけを見て欲しい。」
と、言われた。
「私は、おばあちゃま以外
家族にも愛されない人間なんです。
だから、きっと忍さんも
秋山さんが連れてきた
いち銀行員が物珍しいだけだと。」
ああ、こんな言い方をするつもりでは
ないのに。
忍さんがそんな人では
ないのは、わかっているのに
幼少の事が絡むと
どうしてこんなに卑屈になるのだろう。