誰からも愛されない

✛✛辛そうな悲しそうか顔


そのまま手を引かれて
ソファーに座らせられて
顔を覗かれて
「ごめんね。黙ってここへ連れてきて
ここは、僕の部屋だよ。
車の中で彩心ちゃんが、寝てしまって
彩心ちゃんのマンション知っているけど
どうしても一人にしたくなくて。
僕が、まだ一緒にいたいのが大半だけどね
で、ここに連れてきました。
あっ、シャワー浴びておいで。」
と、彩心の手を繋いだまま
脱衣場に連れていく。

「キャリーに着替えある?」
と、訊ねると
頷いたので、キャリーを脱衣場の中に
入れてドアをしめて
忍は、朝食を作り始めた。

彩心は、暑いシャワーを浴びた。

泣きすぎた顔は、パリパリで
少し痛かったが
ゆっくり洗い流していった。

着替えてリビングに戻ると
美味しそうな朝食ができていて
忍さんに座らせられて
「さぁ、食べよう。」
と、言われた。
「「いただきます」」
と、二人で言って頂いた。
「美味しい!」
と、言うと忍さんは、
嬉しそうにしていた。

食事が終わり
「片付けをさせて下さい。」
と、無理言ってさせてもらい
終わる頃に忍さんに呼ばれた。
「彩心ちゃん。
  電話聞こえていたでしょ。」
と、言われて
「全てなのかわかりませんが。」
と、答えると
「うん、父と話していたんだよ。
ごめんね。君のお父さんなのに
あんなこと言って。
でも、何もしていない彩心ちゃんが
なぜ毎回傷つかないと
いけないのか、僕には理解が
出来なくて、許せなくてね。」
と、言いながら
両膝に肘をおいて手の平で
顔を覆ってしまう忍さんに
「忍さん、ありがとうございます。
嫌なこと聞かせてしまいました。」
「そんなことない。
話してくれたのは、嬉しかったんだ。
ただ、彩心ちゃんが辛い思いをしていた
のが、嫌だっただけなんだ。」
「私は、誰にも愛されることはないんだと
ずっと思って来ました。
皐さんと紫月さん以外。
ああ・・えっと、忍さんも?」
「なぜ、疑問系か、わからないけど。
その前に皐さん?紫月さん?とは。」
「皐さんは、元の旦那さんのお母さんです。
おばあちゃまが亡くなって
一人になった時に
父に引き取られましたが
私を育てることを拒否していたので
隣に住む 新のお母さんである
皐さんが、私と新を育ててくれたのです。
皐さんは、新と私が離婚したときに
新との縁を切ってしまいました。
紫月さんは、四井銀行の前の支店の上司で
今回の移動も紫月さんが
札幌支店に移動させてくれました。
青山支店長が紫月さんの先輩なのです。」
と、言って忍さんを見ると
辛そうな、悲しそうな顔をしていた。
< 41 / 107 >

この作品をシェア

pagetop