誰からも愛されない

✛✛一緒にいても良いの?


彩心は、青山に教えてもらえた
病院に駆けつけると
受付に楓さんがいて
部屋へと案内をしてくれた。

案内される間
二人とも会話はなく
ひとつの病室の前に着くと

楓は、
< コンコン >として
ドアを開け道をつくり
彩心を中に入れドアを締めた。

一人病室に残された彩心。

ベッドにいる忍らしき人のそばに
近づくと······

「‥・・・・しの‥‥ぶっ‥‥さんっ‥‥」

青白い顔をして、頬は、痩け
目の下には、隈が······

「睡眠不足、栄養失調、過労だと。」
彩心が、はっと振り向くと
秋山が立っていた。

「彩心ちゃんとお別れした日かな
12月25日からマンションに戻らずに
ずっと会社で仕事をしていたらしい。

眠ることもあまりできずに。
バカなやつだ。

彩心ちゃんと別れたくないなら
そういえば良いものを
守りたいのに護れなかった。

だから、彩心ちゃん自身が決めた事に
従うと決めたらしい。

まあ、寝ずに仕事をしてくれて
会社は、また、大きくなったがな。」
と、笑ってくれて
「いいかい、彩心ちゃん。
君が責任に、おもうことは違うよ。
ただ、秋山家に···とか·····
忍が社長だから····とか·····
関係ない。

彩心ちゃん自身の事が
秋山にとって問題になるなら
はじめから、私は、彩心ちゃんに
声などかけないよ。

忍も同じ気持ちだよ。
だから、自分の気持ちだけを
大事にして欲しい。」
と、言うと
秋山さんは、
そのまま、忍さんの病室を出て行った。

彩心は、秋山の背中に頭を下げた。

それから、忍をもう一度見て
痩けた頬を手の平で撫でると

忍が·····
「‥‥あこっ‥あっ・・・・こ‥‥あこっ‥‥」
と、涙を・・・・一筋・・流した。

私も、離れたくなかった。

でも、弱い私の選択が忍さんを苦しめた。

私は、貴方と一緒にいても良いの?
あなたの足でまといにならないの?

それから、忍の手を握り
座っていると
忍の懐かしい香りと体温に
彩心もベッドに頭を置いて寝てしまった。
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