朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
恐怖心。畏怖心。絶対的な、華取在義。
なんとなく、夜々さんの言いたいことはわかった。
はっきり言葉に出来るほど明確ではなかったけど、薄ぼんやりと輪郭だけは摑めた気がする。
父さんはそういう種類の人なのだと。
そして、受け入れられてばかりではないと。
『でも、違うのよね。在義兄さんは炎な人だから、『焼かれてしまう』と思うみたいだけど、本当は在義兄さんに誘発されて表に出てしまった、自身の炎に呑まれてしまっているだけなのよ』
在義兄さんではなく、自身をちゃんと見ていれば、簡単に対処出来るのだけど。
夜々さんは困ったように眉尻を下げてそう言った。
「笑満。お祝いしてくれるのは嬉しいしありがたいんだけど……どうしたの? ちょっと元気ない?」
私の耳に聞こえる笑満の声。
いつもより高い音で喋るのは、笑満が無理に元気を作っているときのクセだ。
その指摘に、笑満は黙ることで答えた。私は笑満の声を待つ。