朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
朝間先生が言う。
高校時代の俺を知っているなら、降渡のことも知っているだろう。
「ええ。琉奏がお世話かけてます」
降渡が人懐っこい笑いかたをする。
「あ、宮寺くんとも面識あるんですね。雲居くん? 在義兄さんが喋っていたって言っても……口元隠してないですよね? 普通に喋ってると思ってました。そこは」
降渡が二度瞬いた。
「ええ。ここに音声機ありまして、在義さんの声を通してました。あまり近づくと距離感とかでばれますけどね」
と、服の喉元を差す。
「聞こえてくる音波に合わせて口を動かすくらい、なんてことないんだよ。降渡くんたちは」
降渡の解答を聞いて、戸惑うように見上げて来た朝間先生に在義さんが説明する。
『声』ではなく『音波』と。
「って言うか、咲桜ちゃんのことあんな言い方、演技と言えども俺がしたら殺されるでしょ。在義さんに」
「そこはね」