朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
桃子母さんが眠るのは華取家の墓だ。
この前、在義父さんのいる『華取家』は傍系だと知ったけど、在義父さんは桃子母さんを代々の墓に横たえさせた。
自分の妻として。
寺の裏山に段々に作られた墓の一つ。
流夜くんと、その前に立った。
「はじめまして。桃子さん」
繋いでいた手を解いて、流夜くんは語りかけた。
私は手を組んで、静かに聞いている。
「在義さんには認めてもらっていますが、咲桜さんと結婚前提で付き合っています」
「………」
う。こう、静かな雰囲気で聞くとこっぱずかしい……。
「咲桜のこと愛してるので、心配なさらずに俺にください」
「! ど、どういう言い方⁉ それって一般的なの⁉」
淀みないいきなりの挨拶にびっくりした。
色々すっ飛ばしていないだろうか。