朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「あ、誤解しないでください。別に流夜が悪さして逮捕状が出ているとかじゃないですから。上の望みは、流夜を警察の人間にすることなんですよ」
またもや空気が波立つ。
俺を見る教師の顔色が変わる。
窺うように見られても、変える顔色なんて持っていないが。
「いやー、本来なら流夜って警察にいるべき奴なんですよ。それをこいつ、教師になっちゃって。今までは上も黙認してたんですけど――そろそろ、流夜の腕が必要になってきまして。なので、流夜に教職を辞めさせて警察に入れる。それが依頼者の目的です」
「警察って――神宮先生? 今の話は、本当ですか?」
稲葉先生が不審げな声で問う。
いきなりそんな話をされたって挨拶に困ると顔が言っている。
「本人には何回も要請しているんですけど、色よい返事をもらえなくて。なので学校側にお願いすることにしました」
視線が次々とこちらに集まる。
それでも無表情で黙す。
……これ、絶対愛子の所為だろ。あのトラブルメーカーめ。
「――神宮、もうタイムアップだ」
割って入った声は宮寺だった。