朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
『そんで、いつでも遙音くんが泊まりに来れるようにって、客室を遙音くん用に改造するんだって二人して言い出して、びっくりした遙音くんが止めに入った』
「………」
うーん、優しさの基準がわからなくなる話だ。
私は役立たずもいいところ、唸ることしか出来ない。
『でも……遙音くんが流夜くんたちに師事して、学問の世界に行ってなかったら、あたし……遙音くんと、逢うことすら出来てなかったのに……』
遙音先輩は、高校に行く気はなかったと聞く。
ちょうど流夜くんが藤城に赴任したから、「神宮がいるところなら」、と特待生枠を獲って入学したのだと。
……確かに、再会の場は、ここだった。
ここでなかったかもしれない。でも、笑満と遙音先輩の天命はここで結ばれた。
「笑満は――遙音先輩が、そういう流夜くんたちの側になること、嫌だったり止めたりしたいとは思わないの?」
『あたしは……お父さんたちより、たぶん在義パパを知ってるからかも。遙音くんに、はっきり宣言されてる。流夜くんたちの方へ、行くって。……支えになりたい、とは思うけど、支えになれるかは不安になった。でも、止めようとは思わなかった』
……ごめん、笑満。大分私のせいで、笑満の感覚をずらしちゃったかもしれない。
空いている片手で顔を覆った。
――そう言われているのなら、