朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
side咲桜
翌日から、流夜くんは――『神宮先生』は変わっていた。
まず、笑わなくなった。
微笑まなくなった、とも言うだろうか。
穏やか、和やかな雰囲気が一切取り払われた。
一度瞳にしてしまったメガネのない美麗な容姿は、好奇心の強い私たち年代には十分な刺激だった。
生徒たちは朝から流夜くんに張り付いて、私なんて近づく余地はなかった。そんな中でも、
「先生―、彼女いますかー?」
そう訊かれれば、
「いますよ」
流夜くんははぐらかさずにはっきり答えた。
「正式に婚約している方なので別れたりしません。ご心配なく」
……一切笑みのない表情で堂々と宣言して、学校中をざわめかせたりもしていた。