朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】


部屋に入って一応、鍵は閉めた。


換気扇を回して、料理を作る。


もしかしたら来たことを怒られるかもしれない。


流夜くんの変な方向に真面目な性格からして、たぶんそうなる。


でも、いい。
 

怒られたら明日は来られないかもしれない不安があるので、量は多めに作った。


流夜くんのすきなものばかり。
 

ローテーブルに置いたり、タッパーに入れて冷蔵庫に入れたところで玄関が開く音がした。


帰ってきた。


時間が惜しいのでエプロンで手を拭きながら迎えに出た。


「お、おかえりなさい」
 

声が震えた。玄関で立ち尽くしているのは、眼鏡をかけた流夜だった。


「……咲桜?」
 

まるで幻でも見ているような顔だ。


「うん、おかえりなさい、流夜くん」
 

一週間ぶり――こんなに離れたのは、頼に怪しまれた時以来だ。あのとき流夜くんは、解決後私を抱き寄せて触りまくった。


今ならその気持ちもわかる気がした。

< 138 / 295 >

この作品をシェア

pagetop