朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
部屋に入って一応、鍵は閉めた。
換気扇を回して、料理を作る。
もしかしたら来たことを怒られるかもしれない。
流夜くんの変な方向に真面目な性格からして、たぶんそうなる。
でも、いい。
怒られたら明日は来られないかもしれない不安があるので、量は多めに作った。
流夜くんのすきなものばかり。
ローテーブルに置いたり、タッパーに入れて冷蔵庫に入れたところで玄関が開く音がした。
帰ってきた。
時間が惜しいのでエプロンで手を拭きながら迎えに出た。
「お、おかえりなさい」
声が震えた。玄関で立ち尽くしているのは、眼鏡をかけた流夜だった。
「……咲桜?」
まるで幻でも見ているような顔だ。
「うん、おかえりなさい、流夜くん」
一週間ぶり――こんなに離れたのは、頼に怪しまれた時以来だ。あのとき流夜くんは、解決後私を抱き寄せて触りまくった。
今ならその気持ちもわかる気がした。