朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「わたしがぶつかっちゃったの。ごめんなさい」
「そっか。尊がすまなかった」
「いえ。私もぼーっとしてたので。お連れ様がいてよかったですね」
笑みを返したとき、私の方にも呼び声がかかった。
「咲桜―、お待たせ―。ん?」
「ごめん、遅くなった。あ、衛さん? 尊さんも」
笑満と一緒に戻って来た先輩が、何故か二人のことを名前で呼んだ。
「遙音先輩、お知り合いですか?」
「え? あー、うん」
歯切れの悪い返事だった。
すると、まもると呼ばれた青年が軽く笑った。「遙音」、と名を呼んで。