朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
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瞼が重い。目を覚ますのが億劫だ。
そんなだるい思考に響く声に呼ばれるように、意識は覚醒させられていく。
「――お、さお」
控えめだけど、しっかりと呼ぶ声。いつだって私を待っている声。
「ぅ…………ぇみ……?」
「あ、よかったあ、目ぇ覚めた?」
「……ここ……?」
真正面に見えるのは見たことのない……天井? 何度も瞬く。
「病院だよ。輸血用に血を取ったら、咲桜が貧血で倒れちゃったの」
笑満の手を借りて上体を起こす。
「ゆけつ……あっ! さっきの人は⁉」
「大丈夫だよ。咲桜と先生の血をもらって緊急オペ入ったんだけど、成功したって。意識はあるって聞いたよ」
「そ、そっかあ……よかったあ」