朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「降渡、退いて。続きがある」
「でも、ふゆ」
「いいから、琉奏の話を聞くんだ。そして……僕らはこれを抹消する義務がある」
「………」
「もう、一つは…………現場に残された、………容疑者と思われるDNAの……一つ、だ………」
「―――なん、ですか、それ」
廊下の隅で話していた全員が、その存在に今、気づいたようにはっと振り返った。
壁に手をついて歩いて来た私は、ただ、今耳に届いた声を、言葉を、頭の中で解釈を始める。
「咲桜! 聞くんじゃない」
いきなり後ろから現れた在義父さんが、私の耳を塞ぐように宮寺先生たちとの間に立った。
「……琉奏くん」
「華取、さん……」
在義父さんの冷たい声に呼ばれて、宮寺先生は力のない声を出した。