朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】


ぐいっと、不意に上から腕を引き上げられた。


父さんの腕から離れて、馴染んだ、一番安心の出来る場所の中だった。


――けど、今はその姿すら見られない。


「んっ!」
 

力の限りと思うほど強く抱きしめられ、乱暴に口づけられた。


後ろ頭を捉えられて、抗う術もない。


誰も、何も言わない。誰も行動しない。


誰も……流夜くんとの口づけを、止めなかった。
 

呼吸が苦しくなった頃、やっと唇が離された。


そのまま、今度は頭を抱き込まれる。


「りゅう――
「お願いがあります、在義さん」


「………」


「咲桜を俺にください」

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