朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
side夜々子
「……在義兄さん」
「………夜々ちゃん」
華取の家のリビングで、陽も暮れて来たというのに在義兄さんは部屋に電気もつけないでいた。
咲桜ちゃんの部屋から降りて来たわたしは、ソファで項垂れる在義兄さんの傍らに立った。
「……なんで、なんでしょう……」
「………うん」
「あの人なら……あの人だけが、咲桜ちゃんを、一番に見て、唯一として………あいして、るのに……」
「うん。今でも、俺もそう思うよ」
「……鑑定なんて、百パーセントじゃない。間違いかもしれないのに」
「……うん。……流夜くんには、こんな結果、問題ないんだよ。ただ……咲桜は、納得も溜飲(りゅういん)も、できないよ」
「………そう、かもですけど」
「……『真実(ほんとう)を否定してもしょうがない』」