朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
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夜になる前、華取の家を訪れた。
あの日から、まる二日経った夕刻だ。
在義さんはわかっていたように落ち着いた様子で出迎えてくれた。
「……来たね」
「遅くなりました。在義さん、お願いがあります。一日、咲桜をください」
「………」
黙る在義さんに、俺は少しだけ微笑んだ。
……力は弱い笑みだったかもしれない。
「ちゃんと、在義さんの許へお返しします。咲桜がいないと在義さんの生活能力はないそうですから」
茶化すような言葉にも、在義さんは真面目な顔で肯いた。
「……わかった。咲桜を呼んでくる」
――最後だ。
松生と朝間先生に半ば抱えられるようにして降りて来た咲桜は、俺を見るなりぎゅっと顔を歪ませた。
逃げ出したい、表情は言う。
俺は先手を打った。
「咲桜、おいで」
いつかのように、いつものように、手を差し出した。
いつだって咲桜はその手を取ってくれた。