朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
side咲桜
「咲桜、抱っこしようか?」
「ええっ⁉」
あ、思わず叫んでしまった。
車中、流夜くんの左手はずっと私の手を握っていた。
アパートについても、降りるのを躊躇っているのをわかったらしくからかわれた。
「いやいやいや! 歩けます!」
「そうか? せっかくだから……」
「流夜くんの言うせっかくは色々おかしいからね⁉」
……過去にも色々と大変な思いをさせられたワードだ。
「久しぶりに咲桜のお茶が飲みたいんだ。いいか?」
……そう言われてやっと、動くしかないのだとわかった。
このままでは、いられないのだと。