朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】


母を責められなかった。自分の命で罪を贖おうとした母を。


死んでしまった理由を、咲桜を殺そうとした理由を、誰も教えてくれなくて。


もう、母が謝ることはない。だから責めることも出来なかった。


泣きつくことすら。


「もっと……いっしょにいたかったよぉ……さおががんばってるの、見ててほしかった……っ、ずっと、父さんといっしょにいてほしかった……っ」
 

ずっと胸につかえていた思い。悲鳴のように転がり出る。
 

母さんと父さんが一緒にいるのを見るのがすきだった。


二人とも、いつも優しくて穏やかに笑っていた。


その間にいられた私は、とてもしあわせだった。


「わたし……りゅうやくんまで………いなくなっちゃやだ……っ、母さんのこと、ゆるすし、もう死なないし、ちゃんと……ちゃんと、生きるから……お願いだから、いなくならないで……」
 

私のお願い。


本当は、そう願いたかった。
 

流夜くんを失えないのは、私も同じだ。

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