朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】


水をかけられそうになった神宮の前に飛び出したのは、俺と咲桜だった。


「さ――」
 

し、と何気ない動作を装って、神宮に向けて口元に一本指を立てて見せる。


その呼び方をするなと。
 

頭にかかった水を手で弾きながら言う。


「わりーんだけど、神宮がべた惚れしてる婚約者って朝間先生じゃないし。神宮が素顔さらさなかったのって俺の所為なんだよ。理由聞きたいなら話すけど、こいつが水被る理由はねえ。勿論咲桜も」
 

俺の言葉に、水をかけた三人のうちの一人は反論する。


「でも――神宮、婚約者いるって公言してるし、夜々子先生と密会してたぞ⁉」


「いやちげーって。神宮の婚約者って朝間先生の身内なんだよ。朝間先生もその人溺愛してるから、この二人最悪に仲わりーの」


「え……そうなの?」


「そうですよ」
 

空気を裂くように答えたのは朝間先生だった。

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