朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「だって衛、雅が剣さんと結婚するって聞いたとき、『自分が剣さんをすきだから認めない』とか言ったんだろ? 大事故起こしてんじゃねえか」
「それ蒸し返すんじゃねえよバカ! ちょっと言い方間違えただけだろ!」
「いやー、あのあと雅が衛を目の敵にして大変だったよねえ。彼氏が男に狙われてる、て思っちゃってさあ。仲良し初代Pクラスの黒歴史、衛の大自爆」
「だから言い方間違っただけの雅の誤解だっつってんだろ!」
吹雪さんの言い方に、衛さんが額に青筋だてて叫ぶ。
「みやび?」
初耳の名前。私の疑問に流夜くんが答えた。
「霧原雅。衛たちの同期で、フロムの剣さんの嫁。旧姓は祀木雅。剣さんとは、雅が十六になってすぐ結婚した。今は刑事」
「えっ、羨ましい!」
私が秒間もなく返すと、流夜くんは微苦笑した。
何が羨ましいと思ったか、この人には筒抜けだ。
「咲桜、フロムって、前に行ったっていう?」
「そうだよ。猫さまのお一人」
私と笑満の間にのほほんとした空気が漂っている。
衛さんはぶつくさぼやいた。