朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「そうだね。マナちゃんは僕の父親の妹だから、叔母だ。だからこそ、今回の咲桜ちゃんのことに僕も珍しく本気で対応したわけだけど――。……だから、僕がマナちゃんをすきなのは、僕の命への言い訳、かもしれない」
「………」
吹雪さんはいつものように、感情の読みにくい笑みだ。
「僕ね、XYYなんだ」
「……え、エックス……?」
数式だろうか?
意味のわかっていない私に、吹雪さんは説明してくれた。
「うん。XYY性染色体異常とも言う。一般的な男性は、XY性染色体だ。
僕は性染色体が通常より、Y染色体――つまり男性性染色体が一本多いんだ。
XXY性染色体異常ってのもあって、これはクラインフィルター症候群って呼ばれる。一時期はこれらが犯罪の――と、これはちょっと脱線するね。時間ないんだった。
ともかく僕はそういう生まれつきのものがあって、これは―――……無精子症候群を引き起こすんだ。
最近では、XYYでも子どもが生まれる例も確認されてるみたいで百パーセントではないけどね。
……女性の咲桜ちゃんにこういう話をするのは気が引けるけど、本当のことなんだ。……ごめんね?」
「い、いえ―――」
吹雪さんが、急に私にそんな話をしてくれるなんて……。