朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】


「僕は先天的に、そうだ。子供はほぼ望めないと考えられる。でも、咲桜ちゃんは可能性あるんでしょ? だったら、……わかるでしょ? 僕の言いたいこと」


「………」
 

私は唇を噛んで――さっきとは、違う強さで――大きく肯いた。


同じ――近い立場に、立たされた人。


目の前にいるのは、そういう人だ。
 

ずっと、悩んでいた。


笑満や同級生には当たり前のようにあって、学校では授業もあって、夜々さんなんかはそれが専門に近い人で。


……自分には、なくて。
 

夜々さんや笑満には、自分から話したのではなく、訊かれて答えたのが最初だ。
 

皆がそうではないらしいけど、背が高いとか成長の早い女子には一般に比べて早期に発現することがあるようだ。


私は小学生の頃から背が高い方だった。


在義父さんと血の繋がりがないと知らない周囲は、在義父さんや桃子母さんが長身の部類だったから、違和感はなく接してきていた。


でも、それを知っている笑満は、中学一年の頃に訊いて来た。


そのときは笑って流れた話。


当時の私が、そういう先天性異常を詳しく考えていなかったのも真実だ。


夜々さんに訊かれたときも、「まあ個人差はあるからねえ」で終わった話。


しかし今は高校一年生――十六歳。


すでに初潮があって、普段の生活の中で生理不順が起こることがある年代だ。


むしろ二十歳くらいまでは、周期が整わないなどの不調はあるそうだ。



私は、それすらない。


前提条件がないのだ。

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