朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
誰にも話せないこと、ではなかった。
笑満にも夜々さんにも話している。
在義父さんにも。
気恥ずかしいのと、申し訳ないの。不安に苛まれていたけど、傍らに夜々さんがいてくれたから、高校に入る前に、在義父さんにも相談していた。
在義父さんは、私の嗚咽まじりの話と、夜々さんの説明を聞いて、
「そう。……今まで、言えなくてごめんな?」
そういうことを話せる環境を作らなかったことを、むしろ詫びられた。
そうして、
「私は咲桜が娘だという、それだけで十分だ。だから、咲桜は自分の心と話していい。私や夜々ちゃんや、箏子先生のことは気にしなくていい。笑満ちゃんに話すことは、咲桜がどうするか決めることだ。話すも、話さないも。……咲桜は、自分の心と身体を一番に考えて、大事にしてあげなさい」
……そう、頭を撫でられた。
どれほどの人を父に持ったのだろう。
もう嗚咽では済まなくて、泣きながら何度も肯いた。
ありがとうと繰り返した。
一番に私を傷つけない道を示してくれるのは、いつも在義父さんだった。