朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】


頼については何も書かれていなかったので、笑満が一人で泣かないように頼に送り届けを頼んだ。


頼が私や笑満のところに遊びに訪(おとな)うこともよくある。


大概は三人そろっていたが、今日は私が一人離れる。
 

拾う相手がいる場所の見当も、指示があったので真っ直ぐに向かおうとして――鞄を押さえて小走りで向かっていると、何やら素通り出来ない人物が道の傍らに立っていた。


と言うか、見過ごせないと言うか――チラ見くらいはしないと傍を通れないような人物。


着物に羽織の男性が佇んでいた。


袖の中で腕を組んでいるような立ち姿で。


……素通りするには場違いすぎた。


片田舎に足半分突っ込んだような場所で見るには。
 

書道の大家や、茶道華道舞踊の家元だろうか。纏う雰囲気が静かで重い。


場違いさが気になりそっと伺うと、若い青年だった。


……ま、まあ若い高名な書家もいるし、二十代でも宗主とか継げるし……? 


うん、面差しが若くても、一般のレベルではない雰囲気。

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