朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
咲桜が哀しそうな顔をしている。自分から離れなければいけないと思っている。
咲桜は何も悪くないのに、自身を赦せないでいる。
『そうか、この現実はそういう感情を伴うことなんだ』。
咲桜を見てその感情を理解した。
俺の中にはそよ風すら起こさない現実だった。
斎月や衛、蒼には一度ずつ訊かれたことがある。
『自分の家の事件を解決しようとしないのか?』
え? 問いかけの意味が分からなかった。
確かに俺の成長には関わる事件だ。
だがそれは、俺の中では順番に検証して片付けて行くべきもので、まだその順番が来ないから手をつけていないだけだった。
過去の未解決事件で、時効に間に合うもの、被害者やその家族から捜査を求められている形跡のあるものから手をつけていた。
吹雪は資料庫に追いやられているので、ちょうどいい場所だった。