朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
『その前にやらんといけないことが山ほどあんだろ』
全員に、同じように答えた。
蒼と衛は、虚を衝かれたような顔をしていたが、それ以上問い詰めてはこなかった。
斎月に至っては、『なら、手をつけるときはちゃんと私を巻き込めよ』と言われた。
うちの事件は、俺にとってはその程度に認識でしかなかった。
神宮美流子は生死が確認されておらず、探すべき失踪者ではあった。
まあ、血縁に縁の薄いために、たまに「きょうだい」とはどういうものなんだろう、と考えたことはあった。
よくわからなかった。
そしたらいつの間にか弟が出来ていた。
――でも今は、それ以上の存在があって。
咲桜が特別な理由は単純で、どうしてか咲桜だけに感情が動くからだった。
理由は知らない。
咲桜だけが色んな感情を、俺に教えてくれる。
『咲桜』と出逢ってから、旧知によく言われるようになった言葉がある。
『流夜が無表情以外のカオしてるの初めて見た』
――その言葉だけで、咲桜が俺に与えた影響のほどが知れる。
まだ、たまに傷付いた瞳をする眼差し。
いい加減抱きしめたままでいたいから、こちらを向かせたい。