朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
流夜くんがうちを訪れることは少なくなったけど、時間があるときはやってきていた。
狙って二人きりになったり、前のように抱き寄せたりはしない。
師とその娘。流夜くんは現在、私にそういう態度で接することを決めているようだった。
まだ、考えている途中だから。
「在義さん、今日は?」
「遅くなるみたいだよ。急な用事でもあった?」
「いや……咲桜に、話があるんだ」
今日もいつも通り、ご飯を食べに来ただけだと思っていた私は、軽く瞬いた。
「なに?」
流夜くんは、私を正面に捉えた。
「藤城を離れて、行く場所が出来た。……行き先は教えられない」
「――なんで?」
「……そろそろ、咲桜は自分のために生きてほしいと思うからだ」
「……私、自分のために、ってか、自分の生きたいように生きてるよ?」
「じゃあもっと言うと、咲桜の将来を、俺を含めて考えないでほしい」
「―――なんで? 考えて、いいんじゃ……どうするか、て」