朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「え? ――あ、はい」
なんと、葉擦れが咲桜のせいで起こってしまったみたいだ。
青年が私を向いて声をかけてきた。
小走りだった足も止まる。
青年はやはり感情を見せず、無表情でこちらを見遣る。
な、なんか、怖い……。
人間離れしているというか……やはり温度が見えないのは、正直やりにくい。
せめてその口の端に笑みでも見せて、無表情を崩してくれたら――……あれ? なんかどっかで聞いたようなワード……?
「初めまして。先日はさくが失礼致しました」
「……さく?」
誰?
私が眉を寄せると、青年は驚いた様子もなく応じる。
「ああ、大和斎月と名乗ったかと思います」
「やま――斎月? あ、はい。と言うか斎月に失礼をしたのは私の方ですが……」
流夜くんの近くに女性の姿を見てしまい、家族扱いするほどなら教えておいてほしかったと騒いだのは私だ。