朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】


「………運命」


「そういう言い方が苦手だったら、他の呼び方でいいんです。なんでもいいんですよ。自分が決めたものだったら。自分の命は自分だけのものではないですけど、主導権――命を導けるのは自分です」


「………」


「『私たち』の影響って言うのはたぶん、『自分が納得出来るものだったら背理でもなんでもいい』っていうとこだと思います」


「………」


「背徳だろうが非道徳だろうが、多少正しくなくても、捕まらない程度ならいいんですよ」


『………』
 

きょ、極論すぎないか……? 


あっけらかんと言う尊さんは、顔と言葉が合っていない。


「『私たち』はそういう風に生きることを決めました。それだけですよ」
 

そう言って尊さんは優しく微笑んだ。言葉の内容とかけ離れているほど穏やかに。
 

正しくない生き方。清々しいほど濁った生き方。
 

義の心の父のもとで生きていた私には、遠い生き方かもしれなかった。
 

でもその生き方を――恋う人たちは、していた……。
 

その先で、流夜くんは――――。

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