朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「お気に召したのならありがたいです。あ、呼び捨てで大丈夫ですよ? 堅苦しいのも苦手ですし」
「そう? じゃあ咲桜って呼ばせてもらうわね」
「どうぞです」
味見もどぞ、と小皿にスープを盛って渡す。
口に含んで、絆さんはぱっと顔を輝かせた。
「咲桜っていいお嫁さんになるわね、美味しい!」
「そんな」
私の顔もほころぶ。そう言ってもらえると、やっぱり嬉しい。
……絆さんは私の好きな人を知らないし、降渡さんからもれることも絶対ないだろう。幼馴染三人の仲は頑強だから。
真正面から褒めてくれる絆さん。
そして中心核の近くにいながらも、私のことは知らない人。
……なんとなく、話したくなってしまった。
「……あの、ですね、絆さん」