朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「ん? なにかしら」
「私……すきな人がいるんですけど、その人、今、近くにいないんです」
「……うん」
私のしんみりした語り口に、絆さんも真剣な顔になる。
「私は、その人と一緒にいたくてですね……。どうにか追いかけたいと思ってるんですけど、たぶん今のままの私では、見つけ出しても、傍にいさせてくれないと思うんです」
「ふむ」
「その人は……犯罪学の分野で生きていて、私では、ダメだって言われました。普通の世界にいる、今の私では……」
「犯罪学? なら法律家になっちゃえば?」
絆さんの何の躊躇いもない提案に、私は顔をあげた。
「法律家、ですか? 絆さんみたいな弁護士?」