朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
side咲桜
大学へは行かない。
二年生のはじまり、四月に、笑満や頼にも宣言した。
二人から反対はなく、力になることがあれば、と言ってもらった。
じゃあお言葉に甘えて最初のお願い、として、『頼、流夜くんの写真撮って来て』と言ったら『あの人は無理。俺の範囲外』と消極的な反応があった。
頼が執着対象者の写真を諦めるなんて……いなくなる前に何かしら、頼に話でもつけていきやがったか。
今日は降渡さんと吹雪さんが、時間があると言ってくれたので、《白》の一隅を借りてノートを広げていた。
二人も教師の資質あるんじゃないかと思うくらいわかりやすい説明で展開してくれる。
遙音先輩は卒業前には龍生さんの養子になる算段が整っている。
龍生さんと二人で話して、大学への進学を決めたそう。
傍ら、《白》の跡継ぎとしても修行中。
そして笑満も《白》での接客を勉強中だった。
今は先輩と並んでカウンターの中にいる。龍生さんがコーヒーの淹れ方を笑満に教えてくれていて、今日もカメラ常備の頼はそれをカウンター席から眺めて写真に収めている。
そんな、のんびりした空気に一つの声が響いた。
「咲桜姉様―!」
「い、斎月⁉」