朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】


「咲桜と、ここに帰って来たかった。――初めからわかっていたことだ。俺は咲桜しか愛せない。……愛してる、咲桜。だからこれからも、俺の手を選んでほしい」
 

繋ぐのも、護るのも、導くのも。
 

差し出された左手は流夜くんの答え。迷うことなく自分の手を重ねた。


「はい」
 

今度重ねたら、何があっても離れない。向かう場所があるなら、遅れたってついていく。


「うん」
 

右手が頬を捉えて、その瞳が近づく。


「ただいま、咲桜」


「おかえりなさい」
 

もう一生、何があったって離れてなんかやらない。


離されたって、繋がってしまうのだもの。


どうやってこの縁を断ち切ると? 


……誰にも、させない。離されたって、また見つけるから。


「……咲桜、帰ろう」


「………うん」
 

流夜くんに手を取られて、一度は終わった場所へ、帰った。

< 289 / 295 >

この作品をシェア

pagetop