朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「………」
「オト――
「生満子。……一ついいかな?」
言い差した妻を制し、憲篤はテーブルの上で指を組んだ。
「遙音くんは、学問の世界だと言ったね?」
「はい」
「遙音くんの言う学問とは、机上でのもの?」
「……いえ。神宮たちと同じ、実践です。現場で携わるものです」
「人の死は、怖くない?」
的に一本矢が刺さったような真正面からの痛み。
先輩はそれを受け止めるのだと覚悟したようだ。
「怖いですよ。たぶん、逃げ出したくなると思います」
「………」
「でも、それでもまた戻ると思います。何度辛い目に遭っても。神宮たちと同じ場所に」
それほど、流夜くんたちに憧れてしまったんだ……。