朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
「お忙しい中お時間いただき、ありがとうございました」
流夜くんが頭を下げる。
「いいえ。遙音を庇護してくださったのが、神宮先生たちでよかったと思っています。これからも、遙音をよろしくお願いします」
「はい」
「それとその……学者のお仕事の方は他言しない方がよろしいのかしら」
生満子さんに問われて、流夜くんは一度瞼を閉じた。
「出来たら、そうお願いしたいです。今教師を辞めて遙音まで中退されては困りますので」
「……そうですね」
さらりと、反対に釘を刺された感じの生満子さん。
「って言うか笑満、どこから出て来たの?」
「えっ」
今更ながら母に訊かれて、笑満は泡喰った。
こっそり奥の部屋に隠れていたから。
手をわたわたさせていると、すっと隣に誰かが立つ気配がした。
「すみません。お嬢さんも心配だったようで、こちらに呼んでおりました」
まさかの吹雪さんだった。