朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】


カタチになって、現実が目の前に映える。


彩が鮮やかに、穏やかに色づきだす。


一つ二つ、花びらをほころばせる桜のように。
 

流夜くんは色んなものをくれる。


感情や、涙や、幸せや、言葉や。


でも、形あるものとしてもらったものは二つ。


首元に光る桜と月のお守り。自分が傍にいられないときに、と言って。


そして、薬指の約束。なんかこっちは魔除けとか言っていたけど。
 

お守りは、今の私を護って流夜くんに繋いでくれる。


薬指は、私と流夜くんの未来が寄り添うことを約してくれる。


……言葉では伝えきれない感情ばかり、流夜くんはカタチにしてくれる。自分も。


……流夜くんに、言葉や想いや、形に出来ないものだけでなく。


……いつか、流夜くんが喜ぶ顔を見たいから。考えよう。たくさん。


「……笑満に報告しないと」
 

幸せが波を引かない。いつまでも満ちたままだ。


電話で一番に、笑満から『おめでとう! 夜々さんはうまく騙せた?』と応答があった。


私は苦笑するしかない。

< 8 / 295 >

この作品をシェア

pagetop