朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】
カタチになって、現実が目の前に映える。
彩が鮮やかに、穏やかに色づきだす。
一つ二つ、花びらをほころばせる桜のように。
流夜くんは色んなものをくれる。
感情や、涙や、幸せや、言葉や。
でも、形あるものとしてもらったものは二つ。
首元に光る桜と月のお守り。自分が傍にいられないときに、と言って。
そして、薬指の約束。なんかこっちは魔除けとか言っていたけど。
お守りは、今の私を護って流夜くんに繋いでくれる。
薬指は、私と流夜くんの未来が寄り添うことを約してくれる。
……言葉では伝えきれない感情ばかり、流夜くんはカタチにしてくれる。自分も。
……流夜くんに、言葉や想いや、形に出来ないものだけでなく。
……いつか、流夜くんが喜ぶ顔を見たいから。考えよう。たくさん。
「……笑満に報告しないと」
幸せが波を引かない。いつまでも満ちたままだ。
電話で一番に、笑満から『おめでとう! 夜々さんはうまく騙せた?』と応答があった。
私は苦笑するしかない。