朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】

side旭葵



小走りになって保健室へ向かうと、すでに二人の姿は消えていた。


「貸し一つですよ、神宮さん」
 

え?
 

神宮さん? 扉越しにそんな声が聞こえて来て、扉にかけた手が止まってしまった。


朝間先生は、教師仲間はみんな『先生』と呼んでいたはずだけど……。


「……わざわざ恩売りに来たんですか」
 

……え?
 

続いて聞こえた流夜の声が、『神宮先生』ではない。


個人的に知る『流夜』だった。


「当り前でしょう。わたしの咲桜ちゃんを奪っていくような輩には恩も貸しも売りまくって作りまくって破滅させますよ」
 

ええええ―――――――――⁉
 

わたしの咲桜ちゃん⁉ さ、咲桜は朝間先生の恋人だったのか⁉ それを同じ教師の流夜が奪った……⁉

< 82 / 295 >

この作品をシェア

pagetop